日本型雇用がデフレを生んだ


吉川 洋
日本経済新聞出版社
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話題の本、デフレーションを読んでみた。

誤解を畏れずに、一般の人が知りたい部分を、要約するなら、

「日本型雇用がデフレを生んだ」

ということになる。

デフレを引き起こす原因はいくつかあるが、著者は賃金に注目している。
諸外国と日本が最も違う点は、日本だけが1990年から20年にわたって、賃金が低下し続けているということだ。日本は20年かけて、賃金水準がバブル以前に戻ってしまった。
米国ではこの20年間に賃金が1.9倍にまで増えているというのに。
使える金が減るのだから、需要も減るし、物価にデフレ圧力が掛かるのはまちがいない。

では、なぜ賃金が下がるのか?


筆者は、企業収益と賃金の仕組みを経済学的に分析しているが、簡単にいうと、
不況下に陥り、企業の収益が低下したとき、

日本以外は・・・

賃金はカットせず、人員をカットする。
企業収益に関係なく、賃金は一貫して上がっていくが、その時々の景気で、失業率はかなり悪くなることがある。

日本では・・・

雇用(人員)は守り、賃下げ(やボーナスカット)を受け入れた。
企業収益に関係なく、雇用は確保され失業者は増えないが、その時の景気により、賃金は調整される。
賃金調整には、正社員の賃金カット、ボーナスカット、非正規社員の活用などがある。

これにより、不況下に、日本では雇用を守るかわりに、一貫して給与が下がっていったというのである。たしかにそのとおりかもしれない。それがデフレの圧力になった。

日本は長期雇用のリスク調整弁として、儲かればボーナス、儲からないときは賃金カットを受け入れ、雇用を守る代わりに、賃金に関しては柔軟性を保ってきた。

諸外国では、人員カットでこの調整がおこなわれるため一時的に失業者が増えるが、調整で経済が復活して、失業者は新しい産業に雇用される。
日本の場合、雇用は維持されるので、人は会社にロックインされたまま、産業構造の変革がすすまない。

本質的には経済成長にはイノベーションが必要だが、雇用維持優先のため、不況下ではイノベーションではなく、業務効率化によるコストダウンが優先されるようになり、技術力や発想も低下していった。

みんなが平等に我慢した結果、みんなが平等に本当に貧乏になった。
これが、日本のデフレの正体である。

日本型雇用は、高度経済成長を生み出したが、その後20年にわたるデフレも生み出した。

目からウロコの考察だが、これが真実かもしれない。

となると、アベノミクスはどうなるのか?
本書の指摘が正しいと仮定すると、

大胆な金融緩和については、ゼロ金利下での金融緩和は何もおこらない可能性が強いだろう。

一方で、財政出動は、財政赤字を増やし、円安と貿易赤字とあいまって、日本の財政の持続可能性を損なう。

もちろん財政出動は一定の効果があるかも知れないが、あくまでつなぎだ。
株価もあがり、円安で一定の企業収益が復活している今こそ、
財政出動の効果が切れる前に何をやらねばいけないかというと、

賃上げだ。

ということは賃上げを要請した安倍さんは正しいのか?

正しいが、もうひとつ欠けている。

賃上げした原資と等しい分だけ、人員をカットしてよいというものとセットにすべきということになる。
思い切って解雇規制に緩和し、賃上げと人員カットを同時に推し進めていくべきだ。
結局は、日本が変えられなくても最後まで変えられない雇用のところが、本丸だったということになりそうである。


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