日本の製造業が儲かっても潤うのは中国の地方の工場

なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略 PHP新書
PHP研究所 (2014-10-24)
売り上げランキング: 146

L型G型大学で話題になった冨山氏の本。

これは大学の話ではなく、経済の話をしている。広範囲にいろいろな提言がでており、どれもが目からうろこである。この本は、今後の日本の政策を論じるときのベースとして採用されるべき、極めて重要な視点を提供している。今年いちばんのマストバイの本だと思う。

著者は、「グローバル型の経済」と、「ローカル型の経済」は良くも悪くも、ほとんど関連がなくなっているという点を指摘している。

つまり、かつての日本では、グローバル製造業が海外に製品を売ると、その大企業が儲かり、そして系列としてぶら下がっている多くの中小企業が儲かり、地域に還元されて、工場で雇用が吸収され、まわりの産業が潤う、というトリクルダウン効果があった。

しかしいまでは、グローバル製造業がもうかっても、収益はグローバルな投資家に行くだけであり、雇用は中国で生まれ、中国の工場経営者が儲かり、中国の工場の周りのサービス業が潤う。

もはや日本においては、G型に属する産業は3割程度であり、GDPの7割は、内需型のサービス業だ。そのサービス業は、G型の経済と何も関連性がない。

社会主義的な考えのひとは、L型経済が低迷しているのはG型が搾取しているからとかんがえる。G型はもっと配分しないといけないというが、無理に税金や規制をかければ、G型は日本から逃げて他国にいってしまうだけだ。G型の企業の足をひっぱっても、日本のL型の人は豊かにならない。

一方で自由主義の人はG型経済しかみていない。G型のやりかたで、地域経済も改革できる、世界のトップのG型を育成すれば、地域経済もよくなると信じているが、これも嘘だ。トリクルダウン効果は殆ど無いからだ。先ほどいったように、G型の製造業が成長して潤うのは中国の地元経済だ。G型が成長しても、L型経済の成長には寄与しない。

要するにGとLは対立構造にあるのではなく、よくも悪くも関係性があまりないのだ。もはや別の世界の出来事なのである。

GとLは、それぞれ別の力学と経済原理で動いており、これを一緒くたに議論するのではなく、区別してそれぞれに最適な政策をしようというのが本書の趣旨である。

LとGは、良くも悪くも関連性が薄くなっているので、実は、共存できて、両方成長できるのではないかと。これは、非常に新しい主張であり、慧眼である。

G型経済の成長に関しては、市場原理にまかせ競争を促進する形が大事だ。そして日本に本社機能を残してもらうように、法人税率や、規制を使う安いものにするべき。これは従来のグローバル主義のいっていることと変わらない。

L型経済に関しては、すでに需要不足から供給不足に陥っていると指摘する。介護や、バス運転手が地方ではなかなか集まらない。これらの経済を再生するには、生産性の向上が第一だ。サービス業の生産性を向上させ、賃金をあげて、また女性や高齢者の就労機会を増やして供給不足に当てるとしている。

日本の政策は、生産性のひくいL型企業を雇用の確保の観点から延命させる方法をとっていたが、もはや人材は余っているのではなく足りないのだから、この前提は崩れた。ゆるやかに廃業、退出できるようにして、生産性の高い企業に集約していくべきだと述べる。個人保証などが理由で廃業できない企業が退出できる仕組みなどを整えることで、健全な新陳代謝をL型経済にも持ち込むべきとしている。

日本で一番むずかしいのは、このような地域や、L型の産業で、政府の延命策にどっぷりつかっている人々を精算することだろう。これには政治的な困難が伴う。

とにかく、LとGを切り分けて考えて、それぞれに最適な政策を別個に適応するという考えは極めて斬新だ。非常に面白い方法とおもう。

もはや、LとGは、お互いに違いすぎるし、関係性もない。良くも悪くも干渉せず、それぞれが最適な方法で成長をすればいいのではないかと思う。

LとGの区分に全面的に賛成である。

ただ国内の立法は1つなので、Lのための法律がGには不利になり、その反対もある。法律も2つに分けられればよいが、現実的には、G型のための特区が必要になるだろう。

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