科学にわからないことがある理由

科学にわからないことがある理由―不可能の起源科学にわからないことがある理由―不可能の起源
著者:ジョン・D・ バロウ
販売元:青土社
発売日:2000-04
おすすめ度:3.5
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今日ようやく読み終えた。
科学の限界、不可能性に関する本である。限界といっても、宗教や人間性とか環境の観点から科学の限界を攻めるという類の本ではなく、科学自身によって明らかになった科学の限界を解説した本である。
原題が、Limits of Science and Science of Limitsとある。
限界に関する科学なのだ。



物理学、数学、論理学、計算機科学、哲学、経済学、非常に多くの分野での限界の考察が紹介されている。
時間旅行などのおなじみのものもあれば、聞いたことのないものもあった。いくつか紹介しよう。
コンピューターが膨大な数の単純計算を代わりにしてくれて、その一つ一つの結果が簡単に視覚的にとらえられるものであれば、おそらく我々は、この判断で満足するだろう。
しかし、コンピューターが、含まれる個々の段階が複雑すぎて結果を十分にイメージできないほど、複合的な長い計算過程を行うとなれば、我々の「理解」が実際はどこに行き着くのかが心配になってくる。複雑な自然現象を完全にシミュレートしようとすれば、調べられるものの複合度に近づく複合度のプログラムを含むことになる。それは、描こうとする領域と同じ大きさの、原寸大の地図を手にするようなものである。
自然は本質的に複雑で、人間にはそもそも理解出来なものなのかもしれない。
有名な4色定理の証明は、コンピューターを使ったものだった。たしかに証明は正しいものの、その証明のワンステップ・ワンステップはコンピューターが作成した膨大な論理ステップであって、人間が見通して理解出来るものではなかったのだ。これは数学会で物議をかもした。
我々の頭脳は頭にある科学で設計されたわけではないし、進化もそもそもこの目的に頭脳を合わせたわけでもない。今の世界では遭遇しないような課題があった大昔の環境に適応するという不規則な過程の結果として得られた肉体的、頭脳的属性を有している。
人は社会的にやり取りをし、安全な住処を見つけ、暑すぎたり寒すぎたりしないようにし、配偶者をひきつけ、危険や捕食者には近寄らないようにし、できるだけ多くの子供を得るための能力の詰め合わせである。
科学的推論の能力は、他の、一見するとずっと卑俗な目的に合うように選択された能力の副産物として理解しなければならない。だからっ見たところでは、我々に<宇宙>の動き方がわかるための概念的能力を有すべき理由はない。
人間の脳は科学のために進化したわけではない。なので、宇宙を解明するだけの能力をそもそも備えていない可能性もある。



不可能性について、最低限知っておきたいのは、次の3つの定理だ。
直感的に素朴に考えると可能におもえることが、原理的に不可能であるということが証明されている。

ハイゼンベルグの不確定性原理
・・これは、位置と運動量は同時には決して正確にわからないということだ。世界の今を完全に記述することができれば、未来は正確に予想できるが、今を完全に記述することは、そもそも原理的に不可能なのである。

ゲーテルの不完全性定理
・・どんな論理体系にも、その論理体系のなかからは、(もし正しいとしたら、その正しいことを)証明できない命題があるという定理。
論理体系には本質的に不完全性が備わっている。論理という最も基本的な体系に、ある限界があるということを示した、20世紀の知の偉業。

アローの不可能性定理
・・社会の中の個人はそれぞれ個人的な好みをもち、その好みを合計すると社会全体の好みと合致する。みんなの意見を集めて、それを総合して何かを決める。つまりランキング、選挙なりの仕組みだ。これが原理的に存在しないことを示す驚異の定理だ。
あまり知られていない定理だが、社会選択論という新しい分野を切り開いた、インパクトは大きい。

この3つの定理は知っておいて損はない。しらない人がいたら、それぞれに関して入門書もあるので、ぜひ理解しておきたい。



この本はなかなか面白いのだが、ただし・・・翻訳が致命的に悪い。まるで機械翻訳を読んでいるようだ。というか機械翻訳と同じレベル。
翻訳書に慣れている人はおろか、翻訳書好きのひとでも途中で投げ出してしまうだろう。ある程度、自然科学に素養があり、基礎知識背景があって、ざっと読み飛ばせる人以外はおすすめしない。 

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