リーマン予想ほか、最近解かれた数学の難問を解説した本のまとめ

本日NHKスペシャルで、リーマン予想の番組「魔性の難問・リーマン予想・天才たちの闘い」が放送されました。
反響大きく、twitterでもかなり盛り上がってます。
こちらのブログも、リーマン予想を検索ワードにして来ているひともちらほら。

リーマン予想とは、

「リーマンゼータ関数の自明でないゼロ点は、すべて実数部が1/2だろう」

といったものなので、なかなか簡単には理解できない話なのですが、一般向けの良書も発売されており、NHKスペシャルの放映もあって、注目を浴びています。

どうして、注目になっているのか?
ごく簡単にいうと、現在の数学の未解決問題のなかで「一番の大物」だからです。これを仕留めれば確実に歴史に名が残る。名誉だけではなく、数学という学問の進展においても最大の功績を残すことのできる重要な問題なのです。
リーマン予想は、数学の基礎的な部分(素数の分布)に深くかかわり、さらに数学の他の広い範囲と密接なかかわりがあるとされています。



ここ数十年は、あとでも述べますが、何百年も未解決だった問題がつぎつぎと解決している奇跡の年です。ここ10年くらいでも、フェルマーの大定理、ポワンカレ予想、ケプラー予想といった問題が解決されています。
それでも頑なに解決を寄せ付けず、それでいてとりわけ重要なのがこのリーマン予想なのです。

他の未解決問題のなかでも、リーマン予想は一般のひとでも理解できる数式で書かれており、そういう意味でも、一般の人でもロマンを終える数少ない問題です。残りの未解決問題は残念ながら素人にとっては問題自体を理解するのが困難なものも少なくありません。

リーマン予想は、一般の数学ファンにとってのこされた最後のフロンティアなのかもしれません。

ここでは、一般向けに書かれている、おすすめ本を2冊あげます。

著者:マーカス・デュ・ソートイ
販売元:新潮社
発売日:2005-08-30
おすすめ度:4.5
著者:John Derbyshire
販売元:日経BP社
発売日:2004-08-26
おすすめ度:4.5




「素数の音楽」のほうが、より一般向けの本です。数学がまったく分からないというひと向けに書かれていて、数式をあまりつかわず説明がされています。リーマン予想そのものの説明もさることながら、数学の歴史や、周辺の有名な数学上のエピソードなども含まれているので、初心者が読むにはこちらがよいでしょう。とくに数学の知識がなくても、リーマン予想に関する人物の歴史をとおして、数学のダイナミズムを実感することができます。

「素数に憑かれた人たち」のほうは、ややアドバンスド。前者と違い、歴史や人物物語よりも、リーマン予想そのものの数学を追っていく系の本なので、かなり数式がでてきます。log、微積分が何を意味するのか、複素数とかが分かってないと後半は理解が難しいかもしれません。
筆者も前書きに「本書で用いたものよりも初歩的な数学を使ったのではリーマン予想は説明できない。したがって、本書を読んでリーマン予想を理解できなければ、これから先も理解できないであろう」と書いてあります。
ただリーマン予想にまつわる数学を、高校数学レベルで分かるように解説した本は他に類書がなく、その意味で、前提となる数学知識があるひとにとっては、リーマン予想の驚くほど示唆にとんだ内容を「物語」レベルではなく「もっとリアル」に体感できる良書だと思います。
後半、とくにπ関数の値を正確に求めるくだり、J関数や、誤差項の計算をするあたりにはたいへん興奮します。

一般向けの数学のノンフィクションは、良書がたくさん出版されています。
とりわけ、この分野の先鞭をつけたのは、サイモン シンの、「フェルマーの最終定理」という本でしょう。もし、数学関連の本を一度も、読んだことがないなら、まず、これ読んでみてください。

とにかく面白い。数学をめぐるあらゆるテーマがつまっており、歴史絵巻、人物絵巻としても面白く、最高の知的興奮が得られます。

どれだけおもしろいかは、他のひとのレビューをみていただければわかるでしょう。正直、私が過去に読んだあらゆるノンフィクションの中で、この本はベスト3に入る本です。

著者:サイモン シン
販売元:新潮社
発売日:2006-05
おすすめ度:5.0



また、ここ数十年くらいは、何百年も解かれていないような超難問の数学の身解決問題が次々と解決されているといいいました。
どういう問題があるのか、知りたいとおもうでしょう。
たとえば、有名なものはこの4つ。いずれも長い間未解決だった問題です。

・フェルマーの最終定理
・ポワンカレ予想
・ケプラー予想
・四色問題

このような予想が解かれるたびに、一般向けの解説書が出るというのが現在の流れです。
それぞれのテーマでおすすめの本を上げます。

■フェルマーの最終定理
先ほど書いたサイモン・シンの「フェルマーの最終定理」が極めつけで、ベストです

■ポワンカレ予想
ポワンカレ予想自体、命題が一般のひとには分かりずらく、「そもそもの予想の内容」を理解するのが大変です。この本は前半は予想の解説にかなり力をいれているので親切です。ただ、後半それをどのように証明したかというところは、はっきりいって著者も細部を追えてないくらい難しいので、雰囲気をつかむくらいということで。
ポワンカレ予想については、そもそも問題が何であるかを理解できるようになるということのほうが重要かもしれません。

著者:ドナル・オシア
販売元:日経BP社
発売日:2007-06-21
おすすめ度:4.0






追記
ポワンカレ予想については、下記の本がベストです。
分り易い。歴史ドラマもあり、予想についてもよくわかり、どのように解かれたかという経緯もよくわかる。リッチフローでの解決のくだりなども詳しく、ポワンカレ本の中ではベスト


■ケプラー予想
別名を、最密充填問題と呼びます。これも何百年にわたり証明されることがなかった問題ですが、トマス・ヘールズ1998年に解かれました。コンピュータープログラムによる証明が提示されたというのも面白い話です。ケプラー予想の本はそれほど多くありませんので、この本一冊で十分でしょう。

著者:ジョージ・G・スピーロ
販売元:新潮社
発売日:2005-04-27
おすすめ度:3.5




■四色問題
四色問題とは、地図を塗りわける際に、いかなる地図も、隣接する領域が異なる色になるように塗るには4色あれば十分だという定理です。
これも非常に素朴な予想ながら、きわめつけの難問で、長い間数学者を悩ませてきました。
この問題は、問題が解決されたという事実もさることながら、その証明の方法のほうが世の中を騒がせました。というのも、数学の難問の証明に、コンピューターによる力ずくのシミュレーションが使われたのです。
証明の論文には、コンピュータによる計算結果と、その計算を行うプログラムが添付されたのです。
すべての地図の可能性のある数千のパターンに分類し、その数千をスーパーコンピューターによる1200時間のしらみつぶしのシミュレーションにより、4色で塗り分けるという方法がとられました。
人間の演繹的思考によるエレガントな証明が与えられるべきと考えていた人にとっては、あまり愉快なものではなかったのです。
なお、現在においても、コンピュータを利用しない証明は見つかっていません。

著者:ロビン・ウィルソン
販売元:新潮社
発売日:2004-11-25
おすすめ度:4.0




■その他ミレニアム問題
数学の未解決問題については、「ミレニアム懸賞問題」というものがあります。ミレニアムの2000年を機に、アメリカのクレイ数学研究所がそれぞれ賞金100万ドルをかけて7つの重要な未解決問題を提示しました。
その筆頭に上げられているのが、リーマン予想。そしてポワンカレ予想です。ポワンカレ予想は前述のとおり、解決されました。しかがって、のこり6つが未解決というわけです。
7つの未解決問題とは、
リーマン予想、P≠NP問題、ナヴィエ・ストークス方程式、ポワンカレ予想、ホッジ予想、ヤン・ミルズ方程式と質量ギャップ問題、バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想の7つです。
リーマン予想、P≠NP問題くらいまでは、予想の内容がなんとなくわかります。ポワンカレ予想もなんとか理解できます。ナヴィエ・ストークス方程式も理解可能です。
それ以外の4つは、問題自体を理解すること自体が困難です。それをなんとか筆者は解説しようとがんばっています。ホッジ予想などは、あまりに高度に専門的でまったく理解できなくくらい抽象的で、他の文献では解説を完全にあきらめています。この本ではなんとかそれを解説しようと努めていて、おぼろげながら何に関する予想なのかくらいはつかめますので、貴重な文献です。

著者:キース・デブリン
販売元:岩波書店
発売日:2004-08-26
おすすめ度:4.0




■群論
 また、未解決問題ではありませんが、群論という非常に面白い数学の分野があります。モンスター群といわれる巨大な数の話を含む、有限単純群の分類という問題は、人類が成し遂げた知的偉業のうち最大級のレベルのものといわれるほどのすさまじいものです。

(2011.7 追記)
群論は、これまたとても抽象的なので、なかなか一般向けの本はありませんでした。が、相次いで、良書が翻訳されましたので、興味のあるかたは、ぜひ呼んでみてください。
群論については、決定版が出版されました。わかりにくい群論の世界を紐解くように、美しいエピソードとともに案内してくれます。2011年に読んだ本の中ではベストの本です。おすすめします。

シンメトリーの地図帳 (新潮クレスト・ブックス)
シンメトリーの地図帳 (新潮クレスト・ブックス)
クチコミを見る

【ノマド研究所5期会員募集のお知らせ】人生は短いです。あーやりたい事があるのに、何か思い切って一歩を踏み出せない自分にいらいらする、もっと自由に生き見たいのに。ノマド研は、ノマド的な生き方を志向するひと、ノマド的な生き方を実践するひとのネットワークです。400名以上の価値観のちかいメンバーと一緒に語らいましょう。⇒ご案内