スリーパーを競り落とせ! 眠れる名画

眠れる名画―スリーパーを競り落とせ!眠れる名画―スリーパーを競り落とせ!
著者:フィリップ モウルド
文藝春秋(1996-09)
販売元:Amazon.co.jp





ひさしぶりにわくわくする本を読んだ。
この本の主題のスリーパーとは、なまえの通り眠っている名画のことである。
長い年月の間に行方不明になり、作者不詳とされて、本来の価値の何十分の一で取引されている絵画のことである。
腕利きのアート・ディーラーが、これらの名画を見抜き、自分のリスクで購入し、本物である事を証明して、高く売り払う。ダイナミックな話である。


クレメンス7世の石版にかかれた肖像画は、わずか180ポンドでオークションで落札された。
余りに汚れていて、作者も特定できなかったからだ。
しかし、読み通り、これがルネッサンスの画家デル・ピオンボのものと証明される。
絵画は半年後に再度オークションにかけられ、38万ポンドで売却される。

なんといっても印象深いエピソードが、チューダー朝の皇太子、アーサーの物語だ。
アーサー皇太子は、英国の歴史上誰もが知っているほどの有名な人物だが、わずか15歳で没してしまう。その皇太子の肖像画が1枚も世の中に存在していなかったというのだ。
そこに出てきた、アーサーを描いたものだという1枚の絵。
これは本物だろうか?
王室の記録を辿り肖像画の来歴を特定していくさまは推理小説だ。後から変更が加えられた部分や、継ぎ接ぎなどを取り除きつつ絵が本来の姿を取り戻す過程は、心踊らせる。

アダム・エルスハイマーの祭壇画は7つの部分からなるが、バラバラに行方不明になり、1つとして見つからなかった。
それがあるきっかけから、ひとつひとつと発見され、ついには7つのピースがそろい、祭壇画が完成されて、もとの場所に戻った。とても不思議な話だ。

画商の仕事ぶりや、オークションの裏側などについても面白く読めるが、美術にあまり興味がないひとでも、人間ドラマにあふれる一連のストーリーは、ドキュメンタリーとして読む価値がある本である。

なお、この本を元にしてNHKがドキュメンタリーをつくったようだ。
NHKオンデマンドで閲覧できるので、リンクを張っておきたい。
アーサー皇太子の話はこのドキュメンタリーでも扱っているので、本を読む余裕のないひとはこちらを見るといいだろう。



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