社員をサーフィンに行かせよう-パタゴニア創業者の経営論

社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論
著者:イヴォン シュイナード
東洋経済新報社(2007-03)
販売元:Amazon.co.jp
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タイトルは釣りで、社員を就業時間中にサーフィンにいってもいいという人材マネジメント論ではない。内容は、もっと面白いものだ。パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードの創業物語と、経営哲学論である。
パタゴニア製品は私も愛用していて、非常に品質がよく機能的で丈夫なので満足している。ただ、この会社、ときどき、一般の人からすると理解出来ないことをしている。利益度外視で、コットンをぜんぶオーガニックに変更したりと。創業者の経営哲学に触れるうちに、そのあたりのなぜ?が氷解した。
創業者イヴォンの経営哲学は、かなり特殊ではあるが、ビジョナリーで、一貫性があり、どれもが実に感銘をうける内容だった。ビジョンで社員をリードし、ルールではなく自主性で従業員をマネジメントし、持続可能な会社を作り上げていく。日本人が抱く会社経営に対する、まさに理想中の理想が実現されているように思える。
・パタゴニアのミッションステートメントには利益を上げることには少しもふれていない。最終的な損益は、その年に成し遂げた善行の数だとみなしている。
・(品質について)パタゴニアがラガーシャツを作るなら、それを着て実際にラグビーができるものでなくてはいけない。 
・ビジネスを手段として環境危機に警鐘をならし解決にむけて努力する従来型の企業をすべて改革することはできないが、パタゴニアにオーガニックコットンしかつくらせないことはできるし、他の企業にも薦めることができる
・所有者も役員も会社のほうが自分たちより長生きするとなれば、短期の損益を超える責任があることを認識するはずだ 
・私たちにとっては共同作業が最高の形態なので、パタゴニアの文化は協調的な者を高く評価する一方で、脚光を浴びたがる者はあまり容認しない。
・ 100年後も存在する経営を目指す 
日本人のほとんどは、この本が大好きだろう。日本人が理想とする会社の姿をすべて実行しているとおもう。利益を追求せず、流行を追わず品質にこだわり、成長を追い求めず、会社の理想を実現する。本当にすばらしい理想的な姿が書かれている。
ぜひ一度読んでほしい、これぞ経営哲学だと感銘するはずだ。
ただし、ただし、である。
これをそのまま受け取ってはいけない。これらの経営哲学を理解するとき3点注意すべきことがある。おおくの日本人はこの3点を理解せず、パタゴニア経営論を額面通り受け取りがちなので、その点を指摘しておきたい

・非公開企業と公開企業の違いを理解しなくてはいけない
パタゴニアは非公開の企業だからこういうことができる、しかも創業者イヴォンによるオーナー企業だからである。オーナーの理想を実現させたのがパタゴニアであるということを忘れてはならない。
イヴォンは、パタゴニアがIPOしない理由として、IPOした瞬間に四半期ごとの急激な成長を求められ、自分がやりたくないことまでやらざる得なくなってしまうからだといっている。だから非公開企業であり続ける。公開企業が株主のために経営しているのは紛れもない事実で、パタゴニアそれがいやだから非公開企業のままなのだ。
ともすると、日本の経営論ではイヴォンのような理想を上場大企業に求めがちだ。それはおかしい。理想を追求するなら非公開で株式も理想を共にする極少数のオーナーがもつべきだ。其の区別をつけて議論することが大事だ。

・理念があれば経営が緩くてもいいわけではない

・すばらしい事ずくめのようだが、現実にはほかの大半の企業と同じく、CEOをはじめとする多くの経営幹部を外部に求めざるを得ない。どういうわけか、いまだに社内の人間を、専門的かつ複雑になる一方の成長企業ニーズにあうようにきちんと教育、指導することができないでいる。 
・30年間に6人のCEOを雇った
というように、経営に必要な専門の人材は外部にもとめている。

・労働分配率が高かったり、雇用保護があるわけではない
さらに、パタゴニアは、非常に家族的な企業だが、日本のような雇用慣習ではない。雇用がすべてに優先するわけではない。助け合いといのは、なあなあでも良いわけではなく、年功序列で雇用を保護する企業でもなく、低賃金の若い人材が50代の高賃金を支える企業でもない。
・実はパタゴニアの社員にたいする業績評価は厳しい。年功序列や定期昇給などの制度はなく、あくまで個人の達成度合いによって賃金や昇格が決まる。業績次第では賃下げや降格もありうる。
最後のイヴォンの言葉は、パタゴニアが何のために存在するのかについて的確に示している。
創業いらい、ずっと企業の責任とは何かという課題と格闘してきた。ビジネスとは実のところ誰に対して責任があるのかということに悩み、それが株主でも、顧客でも、あるいは社員でもないという結論にようやく達した。 ビジネスは(地球)資源に対して責任がある。自然保護論者のデイヴィッド・ブラウアーは「死んだ地球からはビジネスはうまれない」といった。健康は地球がなければ、株主も、顧客も、社員も存在しない。
パタゴニアの時に奇行とでもよべる経営がなぜ生まれるのかがよくわかった。パタゴニアは、イヴォン氏が地球環境を持続可能なものに保護するための活動のビーグルなのだ。だから、地球環境が優先で、そのためには社員もクビになる。日本的な意味だと、理想が高い会社は社員も大切にして、なんとしても社員を守るが、パタゴニアはそうではなさそうだ。
こういう価値観は、日本人は勘違いして捉えてしまいがちだ。面白い価値観なのだが、取り入れるのにはよくよく理解してからのほうがいいだろう。

おすすめ度
★★★★

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