4つの神話

いま、4つの神話があり、1つが崩れ、のこりの3つがパラダイムの葛藤をしている。

1つめの神話は、内資大企業神話だ。
この神話は、こういうストーリーである:
いい大学を出て東京電力に入社すれば、一生が保証される。終身雇用が約束され、賃金は毎年継続的に上がっていく。そのなかで、結婚し家族を持ち、家を買う。ぼちぼち仕事をしてていても、課長くらいまでは出世できるし、それなりの社会的地位を得て平安な会社人生をおくることができる。60歳になると退職金がでて、企業年金と併せて、豊かなリタイアライフが待っている。



この神話は1990年までは現実性があり、2000年くらいまでは信じているひともいた。
しかし、もうこれを信じるひとはいないだろう。今年大企業に就職した若者にとっては、もはや、終身雇用も、将来の出世も、文字通り遠い神話の時代の出来事にしか思えないだろう。

(※リーマン以降の大不況でこの神話を”信じたいと願うひと”は大量に復活しているが・・)

2つめの神話は、グローバル企業だ。
大企業で、会社におんぶにだっこの神話が信じられない以上、自衛策として、自分の実力をつける必要がある。つまり、プロフェッショナルとしての資質を磨き、プロの経営者として、企業を渡り歩くことができるビジネスマンになるということだ。
欧米のプロフェッショナルCEOがそのモデルである。
内資でのキャリアに不安を覚えたエリート層が、こぞって実力主義の外資系に進んだ。
投資銀行や、投資ファンド、コンサルティングファームなどがその受け皿となった。
いま世界を牛耳っているのはこれらの巨大グローバル企業である。国境を超えたビジネスを行い、ヘタをすると一社だけで、小さな国のGDPを超える存在にまでなっている。独特の共通の価値観をもち、国籍や言語の違いを超越して、平等なチャンスと多額の報酬を提供する。
国家や地域の保護を信じられなくなった人が、新しい秩序として、グローバル企業を選ぶのは自然の成り行きだ。

3つめの神話は、起業である。
大企業神話も、プロフェッショナルビジネスマンも信じられない、というよりはむしろ資本主義のレバレッジをいかして、MAX効率で巨万の富を得ようとおもった一部のエリートは、起業という人生を選んだ。
かつて日本には起業のストーリーがなかったが、1999年ごろ、ネットの勃興と共にVCと新興市場のシステムができたことで、なんの資本も人脈もない学生でも、テクノロジーとアイデアと努力によりビジネスをおこすことができ、わずか数年のタームでIPOが可能となった。そして、一夜にして巨万の富を創造することができるのだ。2000年を中心としたネットバブルにおいて、多くのひとが、この神話に飛びついた。かくゆう私もそうである。グローバル企業に勤めていた私は、この神話を信じ、起業での成功を夢見て、すべての時間をビジネスに注いできた。そして実際に、この神話は多くの億万長者を生んだ。僕が親しい友人のなかに実際に十数人以上の億万長者が存在する。嘘ではない。幻想ではない。

最後の神話、4つめの神話は評価経済だ。
従来の経済システムによらず、信用の価値に力点をおき、個人のブランドや露出で勝負する。貨幣の価値を信用せず、ネットワークを形成し、個人との直接のつながりを作ることで、従来の経済システムによらず、直接の価値の交換ルートを模索する。これは、まだ、成功モデルが明らかになっていないが、この経済システムに果敢にチャレンジしているひともいる。

神話は4つ。
最初の神話は崩れたとうのがほぼコンセンサスにある。
そして、あとの3つのうち、どの神話を信じるかによって、世の中が割れている。

ある人は、グローバル企業神話を信じる。
日本においては成長が止まってしまって成り立たないのは明らかだが、目先を移せば、大きなチャンスがある。アジア、つまり中国なりシンガポールなりを対象として、日本にこだわらず勝負していけば、そこには膨大なチャンスがある。
他の神話を信じるよりも、アジアに広がる大きなマーケットのほうが現実的である。そこで活躍できる人材になることで、十分な将来が約束される。だから、英語と鍛え、自らのプロスキルを研鑽するだけの合理的な理由がある。グローバル経済は行き詰まったという雰囲気が日本のなかではあるがそれは極めて日本的な見かただ。実際世界を訪れてみればそれはレトリックだとわかる。途上国には大きなチャンスがあり、いろいろな紆余曲折はあるにしろ、彼らが発展していく可能性はあるし、その権利があることは誰も否定できない。そしてそのチャンスに一枚噛むことは簡単に想像ができる。

またある人は、起業にこだわる。
いちど起業のダイナミズムを知ってしまうと、その価値観は強烈である。新しいものを生み出すことは何よりの喜びがある。そして大きな成功も約束されている。日本における起業環境はきびしくなってきて、ネットの起業はもはやレッドオーシャンだが、あたらしい起業家の中には、はじめからアジア市場にターゲットを絞っているひともいる。日本に市場がないなら、市場がある国で会社を起こせばいい。単純な話だ。
実際、日本人がシンガポールで会社を起こし、最初に攻めるマーケットがシンガポールやインドネシアだったりする。アジア戦略を練ることに頭のすべてを使う。そういうニュータイプの起業家も出現してきている。
グローバル神話も起業神話も、根底には、日本にはもう成長はないかもしれないが、世界を見渡せば、まだ成長はあるし、成長を作ることができるという信念にもとづいている。

最後に、グローバルも起業も信じられないひとがいる。つまり世界の成長には限界がある、もうすでに天井だと考えるひとだ。会社があり株主と経営者と従業員がいるというという枠組み自体にも疑問をもつ。従来の経済システムの行き詰まりが予想以上の速さでやってくると考えるひとだ。それらの人は、エンプロイーとしてのキャリア価値でもなく、IPOモデルでもなく、自分の信用をどう育てて価値化していくかに全力をおいている。大きな企業を作るよりも持続可能な小さな仕事を複数もつ。貨幣に依存せず、会社という神話や枠組みにも頼らず、個人を単位にして自立して生きていく。
いま、徹底的にパラダイムがかわろうとしているということを信じているということだ。一部に成功者が出てきているものの、まだまだ一般的なモデルかというとそうでもないので、一種の賭けになる

どの神話にも、合理性があり、利点も欠点もある。
内資大企業のシステムが古くなったとはいえ、グローバル外資企業の厳しさにくらべたら話にならないし、起業で成功するのはほんとうに一握りであるし、評価経済社会で生きるのは更にチャレンジングかもしれない。

どれを選ぶかは、僕は、もう個人の戦略、一種の賭けである。
もう価値観すら揺らいでいる時代で、なにがどうだと言っても仕方がない。
どの神話を信じるのか、もしくはすべてを信じないのか。
神話はパラダイムでもある。

正解はないと思う。
どれが正解とも言えない時代にある。

今後はどの神話を選んだかをめぐって個人間の大きな葛藤があるだろう。
どの神話を信じるかによって、人生設計や、みにつけるスキルも違ってくる。
そういう視点で見ていかないと、パラダイムの拠り所のちがう人の意見を読みほどくことはできないだろう。

twitterでノマドの思想と実践について意見交換しています。ぜひ、一緒に未来を考えましょう(@tyk97)

【ノマド研究所5期会員募集のお知らせ】人生は短いです。あーやりたい事があるのに、何か思い切って一歩を踏み出せない自分にいらいらする、もっと自由に生き見たいのに。ノマド研は、ノマド的な生き方を志向するひと、ノマド的な生き方を実践するひとのネットワークです。400名以上の価値観のちかいメンバーと一緒に語らいましょう。⇒ご案内