ブックレビュー 「セカ就」。人間として精一杯生きていくということ。輝きを失わないということ。

セカ就! 世界で就職するという選択肢
朝日出版社 (2013-07-10)
売り上げランキング: 58

 

 

森山たつをさんの、「セカ就」を頂いたのでレビューします。小説を書いているというからなにかとおもったら、セカ就のフィクションだったとは!

ご存知かもしれませんが、数カ月前に森山たつをさんとは「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(略してグロ転)を共著で書かせて頂きました。

グロ転は、海外就職といっても、いろんなタイプのものがあってごちゃまぜに議論されているので、それをキャリアパス、キャリア構築という視点から整理した本です。

「セカ就」のほうは、もっと具体的に、実際に海外就職ってどうなのよという事例が5件、ストーリー仕立てでのっています。

これが、かなり面白い。

海外就職のインタビューとかにしなくて正解だとおもう。主人公はいずれも、日本で就職に失敗してしまった人だったりして、そういうひとが、思い悩んだり、現状を打破する過程で、海外就職をしって、海外でチャレンジし成長するというもの。

例えば、

○ブラック企業居酒屋に入社してしまい、疲れ果てたのち、インドネシアに向かったひとと

○米国の大学をでて帰ってきたものの日本企業では総スカンをくらってしまって、シンガポールに言った人とか

○派遣社員の経歴しかなかったものの、マレーシアにいったら評価されたとか

実際いろんな事例をしっている私からみて、主人公のシチュエーションがもう、ほんとにリアルで、「あるあるあるある」と連呼してしまいました。

いま、日本のよくないところは、選択肢が狭まっていることです。

新卒の就職の1回限りのワンチャンス。そこで、ちゃんとした企業の正社員になれないと、人生おわりみたいな。しかも、その新卒正社員の椅子はどんどん減っている。

そして、ブラック企業に就職してしまったり、海外帰りで馴染めなかったり、派遣社員になってしまうともう終わりとか。

とにかく誰もが不幸になるようなシステムとしか思えない。

レールから外れてしまった人。もしくは、自ら外れていきたい人。外れたくないけど、レールの上をすすむのに疑問をもっているひと。

そういう人の選択肢がもっとふえたらいい。キャリアの選択肢が。

日本企業の正社員になって、できれば定年まで勤めるといったキャリアパス以外の方法があっていいのです。

最近は、外資系にいくとか、起業するとか、ネットベンチャーに入るとか、むかしに比べるとかなり選択肢がふえてきたようにおもいます。ノマドもふくめてね。海外就職もその選択肢の一つだと思う。

その選択肢は、”全員を既存のレールの上に載せる”のが政策のゴールで正しいと信じるひとからは痛烈に批判されているけれども、わたしはむしろ、既存レール以外にすすむ人がもっと増えて、どんどんやっっちゃって、そっちの道がもっと開ければいいとおもう。

ベンチャーだって、誰もがベンチャーなんていつ潰れてもおかしくないとか、スキルがない新卒がベンチャーなんて危険きわまりないとか言っていたけど、新卒で楽天に入社した田中氏が楽天をやめてGREEをつくって、そしてGREEにはいま新卒社員がはいっている。そうやって世の中は回転してきている。

ベンチャーは2回転目にはいったけど、海外就職は、いまが1回転目のはじまりだとおもう。

海外就職については、かつてのベンチャー就職と同じように、批判も多い。海外就職は駐在員の小間使いだとか、給与がやすいとか、全員が海外で働けるわけではないとか、海外ではたらくやつは日本全体からしたらごく一部にすぎないとか、将来日本に帰ってこれなくなるぞとか、お決まりの指摘もある。

「セカ就」を読むと、そんなことはさておき、主人公たちが生き生きとしている姿に心を打たれる。斜めから批判するのもいいけれども、セカ就のストーリーをよんで、なにか心をうたれるものがあって胸があつくなるのは、人間として精一杯生きていって、自分として輝きたいという、とても素直で単純な思いを主人公たちが実直に選択しているからだ。だから、それに共感する。

これはフィクションではあるものの、それぞれに元になった実在の人物がいるとのことだ。そしてその人が感じている、「一生懸命に生きている感」は、フィクションでも実際でも一緒だろう。

個人的には最後に登場した、香港ではたらくIT出身のコンサルみたいなひとの話が心に染みた。なにやら森山さんのような経歴のようなひとだが、この人物のモデルは森山氏自身かもしれない。

そしてこの人物は、それまでのひとが成功談ばっかりだったけれども、この人は海外就職で失敗する。そして、大人としてクールに成長し、さらに大きな花をさかせるのだ。

1-4話までは若者の青春的な成長物語として、5話は、ビジネス小説ちっくなリアル感のあるような話として楽しめるとおもう。

この本からは、海外就職のノウハウとかキャリアの話とか、そういうのを読み取ることもできるけれども、ちょっと自分の考えや選択肢を広くとれば、生きることは楽しくなるのかもしれないということを知ってほしい。自分で変えられることは、いまの世の中、意外にもたくさんあるのだ。

おすすめです。

なお、5話のなかででてきたグローバルの人材とは?といった話が気になるようなら、そのあたりを整理した森山さんとの共著をお読みいただければと思います。そのあたりの疑問にお応えするように、海外がらみのキャリアを整理して解説しています。

普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド
大石 哲之 森山 たつを
東洋経済新報社
売り上げランキング: 41,907
ノマド化する時代 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2013-04-05)
売り上げランキング: 1,883

【ノマド研究所5期会員募集のお知らせ】人生は短いです。あーやりたい事があるのに、何か思い切って一歩を踏み出せない自分にいらいらする、もっと自由に生き見たいのに。ノマド研は、ノマド的な生き方を志向するひと、ノマド的な生き方を実践するひとのネットワークです。400名以上の価値観のちかいメンバーと一緒に語らいましょう。⇒ご案内