ワタミズムによって維持されてきた日本の豊かさ

ワタミ会長が参院選で公認されたことで、ブラック労働の話しがさらに盛り上がっている。

現在、ツイッターでは、サービス残業撲滅の話しがでていて、法律論が先行しているが、たしかに法律論からいったら違法なことがおきまくっている。

残業と長時間労働が常態化している日本は異常なのか?
サービス残業は悪という方向で、残業叩きが流行っているが、もうすこし別の視点からこの問題を考えてみたい。

日本のサラリーマンの労働時間は、私の感覚的に言うと、9-5時ではなく9-9時、つまり夜の9時迄働いている感じがしている。ビジネスマン向けのUSTなども、みんなが見れるようにと、夜9時ごろスタートの番組が多い。

残業をみな嘆いているわけだが、一方で残業を無くしたら日本の豊かさは維持できるのかという面で考えてみたことはあるだろうか?
思うに、日本人は生産性の向上ではなく、長時間労働のワタミズムという禁断の果実によって経済的豊かさを得てしまったのではないか。

日本生産性本部の、労働生産性の国際比較2010年版によれば、OECD諸国とくらべた日本の生産性は次のとおりである。

 

比較対象として米国を100として考えると、日本の生産性はおよそ70%である。

ちなみに、業種別にすると、かなりばらつきがある。

もっとも良い金融仲介で 87.8%

郵便通信73.2%、

製造業で 70.6% (これが日本のほぼ平均)

電気ガス 61.0% 、ビジネスサービス50.8%、運輸 48.4%、

卸小売 42.4%、

飲食宿泊 37.8%

である。

製造業ですら70%なのに、ワタミのような飲食はなんと37.8%であり、これには唖然とするしかない。

しかし、日本人は、米国と比べて同じような賃金水準を保っているのではないか。一人あたりGDPでは負けて無いのではないか?生産性がこれほど違うのに、なぜ同じような生産(GDP)を維持できるのか。

生産 = 生産性 x 労働投入時間

とすれば、調整できる変数は一つしか無い。そう、労働投入量(労働時間)である。

たとえば、米国の70%の生産性で、同じ生活水準を得たければ、1÷0.7 = 1.42倍はたらかないと辻褄があわない。

一日の労働時間 8時間に、1.42をかけると

8 * 1.42 = 11.36

つまり、12時間の労働投入があれば、7割の生産性でも、100のアウトプットがえられる。

これを労働時間にしてみると、9時~17時ではなく、9時~21時まで働けということだ。この9時~21時というのは、およそのホワイトカラーサラリーマンの労働時間の実感値にまさにピッタリ来る。実にピッタリだ。
ワタミのような40%の生産性の場合、一日20時間働く必要がある。朝6時出社深夜2時帰りで20時間。ワタミの過労死した店長の労働時間と似通ってくる。

つまり、僕らは、生産性が低いのを、長時間労働で補っているのではないか。

日本人にとっては、生産性をあげるという頭を使ったりイノベーションが必要なことを行うよりも、長時間労働という精神的にがんばればなんとかなるほうが日本人にとってはなにかと楽だ。

日本は、労働時間の延長というワタミズムによって、先進国としての所得を手に入れたのだ

サービス残業をみんながしているぶんだけ余剰の利益がうまれているのならば別だ。サービス残業している分だけGDPが米国よりはるかに高いなら別だ。しかし現実はそうではない。

サービス残業をしまくっても、対して利益がでてないどころか、赤字の企業すらある。

なので、悲しいが、給与の額面は8時間労働にたいしてではなく、12時間労働に対してはらわれていると考えたほうがいいかもしれない。法律のたてまえ8時間しか働かせられないので、8時間ぶんの給与として表示されているが、実際はそれは12時間分の給与なのだ。

だから、同じ給与で8時間でさっさと帰ってしまう奴は、サボっていると捉えてしまってもあながち変ではない。8時間しかはたらかなければ、生産性からいって合わないのだから、8時間でかえってもらっては給与泥棒である。

生産性が低いぶん、もっと給与は安くていいから(3割減とか)、そのかわり8時間できっちり終わらせてよ、という人もいるかもしれない。賃金がやすくてもライフワークバランスという働き方を作れるのかというのも論点だろう。

日本の企業においては、業務の効率も悪いうえ、余剰人員が多いため、それが全体の生産性を下げている。効率化することは可能だが、業務効率化にしても、余剰人員が出るため現場が反対する。余剰人員をカットできれば、企業の生産性は向上するが、反対に社会全体でみると失業率は一時的にアップするだろう。

米国型はこのようにして一時的な失業を生み出すが、それが他の産業や、より賃金のやすい産業に再雇用されて調整が行われてきた。*
米国では儲からないときは、人員カットで調整する。

日本においては、企業内で調整するしかないが、雇用の維持を最優先するため、余剰人員のコストも含め、生産性が低下し、それをサービス残業の増加という形で調整せざる得ない。
人員は一定なので、儲かるときは残業が減るが、儲からなくなると残業を増やして対応する。

このような構図を頭にいれおかないと、単に法律を杓子定規に適用してサービス残業を糾弾しても、こんどは当の企業が崩壊してしまうだろう。労使が一体化していて現場が強く、雇用の規制も強い日本では、「生産性をあげられない経営者が悪い」という話も一方的だと考える。

⇒続きをかきました「ワタミズムと生産性 日本のとりうるべき3つの改善シナリオ」

デフレーション―“日本の慢性病
吉川 洋
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 4,688

【ノマド研究所5期会員募集のお知らせ】人生は短いです。あーやりたい事があるのに、何か思い切って一歩を踏み出せない自分にいらいらする、もっと自由に生き見たいのに。ノマド研は、ノマド的な生き方を志向するひと、ノマド的な生き方を実践するひとのネットワークです。400名以上の価値観のちかいメンバーと一緒に語らいましょう。⇒ご案内