英語が出来るグローバル人材の社員がまったく使い物にならないという話が勘違いも甚だしい件

大研究 なぜ日本の企業はこんな採用をしているのか ユニクロ・楽天・グーグルほか 急増中!「英語ができて、仕事ができない」若手社員たち(現代ビジネス)

という記事がバズっているようだ。

「A君は、グローバル採用という制度を利用して、ボストンで採用されたUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の卒業生でした。その肩書通り、確かに英語はペラペラで、TOEICの点数も同期40名のうち、トップの940点だった」

 当初A君は、同期だけでなく、上司からも「あいつのスペックはすごい」と期待されていた。しかし、入社後まもなく始まった、研修センターでの集団行動からボロが出始めた。

「まず、敬語がまったく使えない。研修担当の社員に注意されると『向こうには敬語がないから』と言い訳し、ふて腐れる。会議中にも、『頭の中では英語で考えているから、日本語がすぐに出ない』などと言っては周囲をいらつかせ、夜の宴会で社員から『ウーロンハイを作ってくれ』と言われると、『ぼくは店員じゃないです!』とキレるといったありさまでした。上司からの評価もガタ落ちです」

「グローバルかぶれ」の典型のようなA君。研修を終えた後は、島根配属が決まった。しかし、彼にはそれが我慢ならなかった。「俺はグローバル人材だ。田舎の中小企業のおっさん相手に営業をするために入社したんじゃない」と言い放ち、島根の地に一歩も足を踏み入れぬまま会社を去ったという。

といったエピソードがあるが、もう頭が痛くて、どうしょうもない。

グローバル人材が、日本の文化がわかってないから使えない。日本の慣習や、日本の団体行動とか、敬語がわかってないから使えない。そういう論調。これがグローバルかぶれ?

当たり前じゃないか?

論点を非常にシンプルにいうと、日本にいて、日本市場むけに日本のお客さん向けに仕事をする仕事は、「日本ローカル」の仕事だ。日本ローカルの仕事をするには、英語はいらないし、グローバル人材は不要だ。

グローバル人材は、グローバルな仕事につかせてこそ活躍する。グローバル人材に、日本ローカルの仕事をさせても、仕事ができないのは当たり前だ。

グローバル人材が、日本のローカルな仕事に就職してしまうと、たいへんな目に遭う。グローバルかぶれなのではなく、グローバル人材だからこそ、日本の仕事につかせたら活躍できないのである。

日本のローカルでは、日本のスペシャリストがもとめられている。
すなわち、日本人の気質や、日本人ならではの行動や、飲み会や、団体行動などに精通し、見事な営業ができたり、気配りができたり、他人の仕事も手伝ってあげて協調性のある行動をするようなひとが、「仕事ができる」ということになる。つまり、よくできた日本人のことだ。

実はこれは外資系でもそうだ。外資系の日本法人ですら、日本のお客さんを相手にする場合は、敬語をつかって、飲み会もやるし、お客さんの日本人ならではの微妙な空気を読んで根回しなどもする。これは文化の違う外国人にはむずかしいことので、日本法人において、日本のお客さんの担当は、ほとんどが日本人が担っている。日本人相手の営業職は、日本人が最適なのだ。

これは、他の国のことを考えたらわかるだろう。
日本の会社で仕事ができるといわれる日本人を、中国の会社が採用したとしよう。しかし、中国の独特のメンツの建て方や、人間関係で動く力学、中国的な根回しの進め方や、彼らの文化に則った接待の作法などの「中国式」に精通してなければ、いくら中国語がぺらぺらでも、しごとにならないのは明白だ。「あいつは日本ではNo1とか言ってるけどお笑い種で、中国のことはなにも知らない日本かぶれ」っていわれるオチだ。

同様に、「日本式」「中国式」は、「アメリカ」にいったら通用しないし、「アメリカ式」は「アラブ」では通用しないだろう。あたりまえなのだ。

つまり、「ローカル」に根付いた仕事は、地域の文化や習慣に密着しているので、それぞれに精通してないとしごとにならない。そして、たいがいはそれに精通しているその国のひとがする仕事なのだ。営業職などは最たるものである。

だから、さきほどのUCLA卒業のまるで日系アメリカ人みたいな人材を、こういう「日本ローカル職」に当てても機能するわけがない。

一方で、ローカルな習慣がわからなくてもできるしごとがある。それがいわゆる国籍を選ばないグローバルな仕事だ。

グローバルな仕事というのは、たとえば、グローバル視点での経営戦略、企画、組織戦略、ファイナンス、基礎研究開発、グローバル調達、グローバル人事、みたいな話だ。ようするにグローバル本社の仕事で、これらはどの国籍・文化のひとがやっても問題ない。

これらの仕事は、英語ができればよくて、日本語を知っている必要はないし、各地の文化や根回しに精通してなくてもできる。こういう仕事がつまりグローバルな仕事である。

たとえばgoogleで検索システムの基礎アルゴリズムをつくる仕事に、日本人的な文化や団体行動や根回しやウーロンハイをつくれるかどうかなどは全く関係ないし、それはインド人でも、中国人でも一緒だ。

グローバルな人材は、ようするに、グローバル本社の仕事のようなタイプのものを英語で行うような形で教育されている。UCLAのその人も、グローバル・スタンダードな仕事の場所でやったらちゃんと活躍できたのだろうに。

要するに、グローバルな仕事をグローバル・スタンダードで行うようなところしか、グローバル人材はいらないのである。

もし、そういうものがその会社になくて、日本式で意思決定するような本社でしかなければ、グローバル人材は、そもそも取ってもしかたないのだ。

これ当たり前すぎる話。

ちなみに、だから、日本企業は本当のグローバル人材を採用できないし、活用もできない。

なので、日本企業の独自の定義による括弧付きの特殊な “(グローバル人材)” なるものがもてはやされるのだろう。

このローカルと、グローバルの仕事の切り分けについては、よく理解しておいたほうがいい。とくにシンガポール勤務とかでも、それがアジア全域を統括するようなグローバルな仕事なのか、それともシンガポール国内、インドネシアやタイなどのアジアの個別市場むけのローカルの仕事なのか、それによって求められるスキルも大きく違う。

しかし、大概のばあいはごっちゃにされて議論されている。
そのあたりは、拙著で、グローバル-リージョン-ローカルという3段階の仕組みと、それぞれどのような人材が必要で、活躍できるのか、といったことをちゃんと議論した。
まともな議論をするためには、このあたりの認識をあわせてほしいとおもう。

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