クールジャパンは「輸出」を目指すのではなく、世界のサブカル人材を呼び込む「ハブ」を目指すべき

 クールジャパン戦略があまりにお寒いので、なぜ寒いのか指摘しておこう。

日本製スイーツ、世界へ クールジャパンの柱

たとえばこれ。日本のスイーツを海外に売り込もうとしている。

日本のスイーツを「日本のスイーツは基本に忠実でいながら海外よりも創意工夫もされている。手先が器用でまじめな日本人の精神を表現するにもぴたりと合う」だそう。

そのために、「日本全国のパティシエらが一堂に会し、職人の技を披露するフェスティバルを世界各国で開く」、らしい。

海外で、日本人による日本の技のコンテストのデモンストレーションですか・・・

完全に、物を海外に売りに行くという前時代の発想になってしまっている。

海外に物を売りにいくのではなく、これからの時代の文化の発展は、ハブ戦略です。

世界から、その文化に関して関心のある、人材や、研究者、マーケット、投資家、お金をすべて、もってきて、集積しないといけません。

わかりやすく言えば、ハリウッドです。あそこには、映画ということにかんして、世界中から一番の才能があつまります。俳優しかり、脚本家、監督、美術、音楽、そして、お金と経営センスのもったひとびと。

才能とマーケットがつながり、集積され、ハリウッドは巨大な映画の中心地になっています。
ネットワーク外部性という言葉を知っていると思いますが、いちどこのように集積して便利になると、その場所(ハリウッド)に行ったほうが便利すぎるので、他の場所には人があつまらなくなります。

昔はパリやベルリンで映画を撮っていたかもしれませんが、現在はハリウッドです。ハリウッドなんてなにもなかった場所です。そこが成功できたのは、映画の才能と、お金を集積できたからです。

いまは、世界の国境がなくなってきていて、なにか一つの分野で、才能やお金が集積し始めると、その場所にどんどんと国境を超えて才能がやってきます。クリエイティブなひとは、国を移動して動きます。(クリエイティブクラス・ハイパーノマドといいます)

このように、クリエイティブなノマドの才能を集めて集積した都市が、文化を築いていくのです。

たとえば、現在の芸術の中心地はNYです。いまだに芸術の都はパリだと思っているひとがいますが、それは中世の話です。いまパリには芸術のあとかたもありません。
現在の世界の芸術の中心地は、圧倒的にNYです。アーティストの数、質、ギャラリーの数、アートの市場、取引の厚さ、どれをとっても、中心はNYなのです。

かつてNYには芸術はなにもありませんでしたが、ピカソやその他大物がアメリカに移住し、アメリカの芸術が発展し、そしてアメリカに世界一の富裕層が増え、NYに住み、彼らが莫大なマネーで芸術をパトロンすることで、アーティストがNYの市場めがけて世界中から集まってくるようになりました。ギャラリーも増え、芸術のインフラがNYに集中したのです。

アメリカ美術は独特でした。ポロックのアートしかり、ポップアートしかり。しかしこれをヨーロッパに対して、売り込みに行ったわけではありません。世界の中心地となったNYで、これらのアートを展開し、アートの中心にアメリカのアートを据えたのです。

日本のクールジャパンも同じようにしなければいけません。日本のアニメやゲームなどの文化に興味をよせる人は世界にもたくさんいます。

それらの才能が、あつまり、交流がうまれ、お金が生まれる中心地を、日本国内につくり、そこへヒト・モノ・カネを集積させることを目指すべきです。

秋葉原の機能をさらに発展させ、あそこに、ゲームやアニメの教育機関・大学・研究所、そしてビジネス・会社、そして、取引市場をつくる。あそこを世界のサブカルチャーの中心地にして、世界中から才能をよぶべきです。それが真のクールジャパン戦略です。

これをハブ戦略といいます。飛行場のハブと一緒です。

クールジャパンの戦略の間違いは、日本人がつくり、世界に売るという方針です。

違います。本当に世界的な文化になりたければ、世界の人がクールジャパン的なものを作って、研究し、ビジネスにしないといません。だから、世界から、日本に人をよぶのです。

日本側は、単に人を読んでもダメです。
たぶん日本の従来の発想のまま、ひとを呼ぶと、「クールジャパン文化を学んでもらう」になってしまいます。
ちがうんです、外国人にも、クールなやつはたくさんいます。クールジャパン的文化を理解し、それを発展できる才能がたくさんいます。ゲームや、アニメを作れる人材がたくさんいます。
彼らを、日本によんで、活躍してもらい、さらに発想の幅をひろげるのです。
クールジャパンを学んでもらうなんてとんでもない。彼らとコラボするのです。
当然、日本語だけではなく、英語も共通語にする。多言語での活動ができる拠点。交流の拠点。

もし、日本にクール・ジャパンのハブをつくらないとどうなってしまうか。
クールジャパン的なものはとても大きな市場なので、いずれ外国にとられます。ほんとです。
先日の、ちきりんさんのブログにもあったように、別の国がそれをはじめます。ニューヨーク大学がゲーム大学院を作って、日本の梅原さんを招聘して講演しているというのです。

そういうことが進むと、結果は明らかです。日本発の文化だったクールジャパンは、NYに(日本以外)の才能が集積してしまい、それが世界のデファクトになります。日本はガラパゴス化します。
そして、ガラパゴス化したあとに、グローバルスタンダードのクールジャパンに合わせるみたいな変な話になるでしょう。柔道と一緒です。

柔道は世界に輸出して普及はできましたが、柔道の中心はヨーロッパに行ってしまいました。いまは日本の柔道がガラパゴスです。

クールジャパンでも同じ間違いを犯してはいけません。

世界中から、クリエイティブな才能(ハイパーノマド)が国境を超えて、それぞれの分野の最適な場所に集まるという現象については、私の新刊を参照ください。現在の世の中の力学は、そういう世界中のクリエイティブな才能を、都市が奪い合うというシナリオです。
という話を、僕の本でもしつこく書いています。

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これからの都市は、世界中の才能をあつめたところが生き残ります。NY、シリコンバレー、ニュージーランドでは映画の才能が集まってきています。

日本(東京)は、高度成長期に、そしてバブル崩壊のあとですら、世界の経済と文化の中心になるチャンスがなんどもありました。しかし、ことごとくそれを逃してきたのです。自国製品の輸出だけを考え、異なる人材や、文化や多様性を取り込もうとしなかった。外国人に都市を開らこうとしませんでした。

現在、香港・シンガポールに徐々に人は、集まってきています。それらの都市にはいまのところ、経済はありますが、文化はなにもありません。しかし、いずれ文化も集積するでしょう。そして、21世紀の勝者には、そのような活気のある都市になります。

 

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