ユニクロブラック論は単純な労働問題ではない、本当の問題は採用の失敗であることに気づくべき

日経ビジネスの柳井さんのインタビューを読んだ。

甘やかして、世界で勝てるのか

ユニクロブラック論に対する、柳井さんからの回答である。

これを読んで、私は柳井さんの考え方を再確認した。やはり柳井さんは、本気で世界で勝てる企業をめざしているようだ。そのためには、優秀な人材がたくさん必要だ。全員が経営者だという全員経営。これも、理念的にはわかる。世界で勝つ企業をつくっていくには、経営者意識をもったリーダーがたくさんひつようなのだ。ユニクロにはそういう人材がまだまだ足りない。

で、柳井さんは、そういう人材になってほしい。そうであれば、何千万、何億円稼ぐすごいひになれる。だから、そういうひとを見極めて、鍛えるのだ。といっている。

大筋では私も賛成だ。リーダーを鍛えるのに、あまっちょろいことをいっていても仕方がないし、厳しい環境でストレスをあたえ、離職率5割どころか、7割、8割、さいごの上澄みの1割を引き上げていくべきだ。そういう人材育成方針は間違ってないとおもう。
これは精神論ではない。欧米のグローバル企業は、こういうサバイバル方式の人材育成だ。できるやつだけが残り、ダメな奴はやめていく。新卒も中途も関係ない。成果主義。
リーダーを育てるには、その方法しかない。柳井さんの考え方は間違っていないと思う。

ただ、徹底的に間違っているところもある。

そのリーダー候補の人材の入社パスが、「日本」「新卒」「店長から」の3揃いことになっているところだ。

これが決定的にまちがいだ。そこにパスには、柳井さんの考えるリーダー候補は集まってこないのではないか。

日本人はそこまでハングリーでないし、新卒の学生のレベルの低下は厳しいし、店長からの入社パスに超優秀なひとが集まってくるとは思えない。それにユニクロの給与水準では、日本人には魅力がほとんどない。もちろん中にそれでもタフにユニクロでやりたいという人材がいるのかもしれないが、めったなことではいないし、その比率が低いので、結果として5割退職、本社に起用されるのはわずかということになるのかもしれない。

グローバルリーダーになれないような層に、むやみやたらな期待をかけて、しごいてしまうと、そのギャップから完全にブラックになってしまう。ユニクロブラックの問題は、採用の問題、採用の失敗にあるのかもしれない。

たとえば、マッキンゼーなんかは、慎重にも慎重をかさねてコンサルタント適性があるひとを、1000人にひとりから採用している。なので、彼らは、一日18時間労働が延々とつづいても、寝不足のまま3時間に渡る議論をしても、上司から毎日罵倒をうけながらもそれでも食らいつくのは、そういう採用をしているからだ。それでも10人に一人も残らない。この環境に普通の人材を採用したら、一年後には誰ものこってないし、ほとんどが鬱になっているだろう。そして、「出来もしないことを強要するブラック会社」のレッテルを貼り付けられているだろう。
しかし、マッキンゼー内で生き残れなくて辞めたひとですら(体を壊して辞めた人もいる)、マッキンゼーをブラック呼ばわりすることはない。それは、ほんとうにリーダーになりたい層を慎重にも採用しているからで、採用のギャップがないからだ。

ユニクロの失敗の本質は、採用の失敗にある。


そして、ユニクロのもとめる経営者人材は、日本、新卒、店長に応募する層からはとれないだろう。

なので、ほんとうにリーダーを採用したいなら、

・日本人を避けて、他の国からひとを採用する
・新卒は採用しない

ということが大事という逆説になるのではないだろうか。実際柳井さんはインタビューで、はじめて採用した中国人留学生が中国のCEOになっていることを上げている。ハングリーでタフなやつをとりたければ中国やほかのアジアの人材を採用したほうがいい。
これなら、新卒を潰すとかブラックとかいわれないで済むし、優秀なひとを採用できそうだし、なにより、今後のグローバル展開の戦略にがっちするではないか。
(実際ユニクロは外国人採用を強化している)

日本では、新卒採用を辞めるか、新卒でも超超優秀なマッキンゼー人材のみを、店長ではなく本社採用で数名取るだけにする。そこには、優秀な人がやってくるだろう。

一方、日本にも1000近い店舗があるわけだから、その国内、店長確保も必要だろう。その現実的な方策としては、

国内では、残業なしのきわめてクリーンな店舗をつくる。店長は、日本人を当てるが、年収は400万程度固定で、残業はないが、昇進もなく、店長は店長のままで、3年契約の社員である。マニュアル化を徹底し、だれでも店長ができるようにする。

これで、晴れて、国内の店舗はホワイトに。マスコミからもブラック企業評論家からもなにもいわれない。とっても優良な企業になるのである。

とにかく、新卒というのが問題だ。幹部人材を新卒で採用しようと考えるから、では新卒が登竜門としてできる業務としては、せいぜい店長職をあてがうしかない。
新卒にいきなり本社の高度な業務はムリだろう。だからまずは店長からということになるのだが、この店長というのは、たぶんに労働集約的であって、そこでスクリーニングをするから、どうしても労働時間的にブラックになってしまう。

つまり、新卒からの幹部人材への登用を一切やめるのである。店長職と本社人材は完全に分離して、人材登用は原則としてなくす。これでユニクロはホワイトになる。

しかし、なぜそれをしないのか。できるはずだが、あえてしてないと私は断言する。

しかし、それは、「稼げないなら、「単純労働」と同じ賃金」とインタビューでいっているの点とかぶるのだが、このようなことをしてしまえば、日本人は単純労働者としてつかい、幹部には中国人・アジア人を採用するという会社になってしまう。日本人に期待しないことと同義なのだろう。

それに「新卒採用からの幹部登用は一切やめます」なんていったら、こんどは、別の意味でブラック企業だって叩かれるに決まっている。

「チャンスがなくなった」って指摘されるに違いない。
「新卒からチャンスをうばっている企業ユニクロ」

これが問題のトートロジーであることは賢明な読者ならお分かりになるだろう。

それはあまりにも、悲しい。柳井さんが、日本人に期待をするがあまり、このようなことになってしまっているのだろう。しかし、それももう、時間の問題だろう。ユニクロの海外事業が日本の売上を超えるのは遠い未来ではなく数年後の姿だ。私は、どこかの時点で柳井氏が日本人への期待、新卒への期待をすて、このようなインタビューで人材育成論を話すこともいずれなくなると思う。

人材は日本の新卒を「育成」などしなくても、海外のはじめからできる優秀な人材を採用してくればすむようになってしまうからだ。

そして、柳井さんが世界を制覇するには、後者の会社になることが肝要だろう。

 

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